胃がムカムカする、胸が焼けるような感じがする(胸やけ)、酸っぱいものや苦いものがこみ上げてくる(呑酸:どんさん)…。これらの症状が、特に食後や横になった時に現れやすい場合、それは「逆流性食道炎」のサインかもしれません。逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで、食道の粘膜に炎症が起こる病気です。近年、食生活の欧米化や高齢化などにより、患者数が増加していると言われています。なぜ逆流性食道炎が起こるのでしょうか。主な原因としては、まず、下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)という、食道と胃のつなぎ目にある筋肉の機能低下が挙げられます。この筋肉は、普段は胃の内容物が食道へ逆流しないように締め付けていますが、何らかの原因でその働きが弱まると、胃酸などが逆流しやすくなります。また、胃酸の分泌過多や、胃の内容物の排出遅延、腹圧の上昇(肥満、妊娠、猫背など)、あるいは食道裂孔ヘルニア(胃の一部が横隔膜の上にはみ出してしまう状態)なども、逆流性食道炎の発症に関与します。逆流性食道炎の症状は、胸やけや呑酸、胃のムカムカといった典型的なものの他に、喉の違和感や痛み、慢性的な咳、声がれ、胸痛、飲み込みにくさといった、一見すると胃腸とは関係なさそうな症状が現れることもあります。これらの症状が続く場合は、消化器内科を受診し、適切な診断を受けることが重要です。診断は、問診や、必要に応じて内視鏡検査(胃カメラ)などで行われます。内視鏡検査では、食道の粘膜の炎症の程度を直接観察することができます。治療としては、まず生活習慣の改善が基本となります。脂っこいものや刺激物、甘いもの、アルコール、炭酸飲料などの摂取を控える、食べ過ぎない、食後すぐに横にならない(最低でも2~3時間は空ける)、寝る時に上半身を少し高くする、肥満であれば減量する、禁煙するといったことが指導されます。薬物療法としては、主に胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーなど)が用いられ、症状の改善と食道の炎症の治癒を目指します。
逆流性食道炎かも?胸やけと胃のムカムカ