原因不明の頭痛に悩まされていると、「もしかしたら脳の病気なのでは…」と不安になるのは当然のことです。ほとんどの頭痛は、偏頭痛や緊張型頭痛といった一次性頭痛ですが、中には命に関わる危険な二次性頭痛(他の病気が原因で起こる頭痛)も存在します。どのような場合に脳の病気を疑い、緊急の対応が必要となるのか、その見分け方を知っておくことが非常に重要です。まず、最も警戒すべきは、「突然発症し、これまでに経験したことのないような激しい頭痛」です。特に、「バットで殴られたような」「ハンマーで叩かれたような」と表現されるほどの突発的で強烈な頭痛は、くも膜下出血の典型的な症状であり、一刻を争う緊急事態です。直ちに救急車を呼びましょう。次に、「手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、言葉が出にくい、物が二重に見える、視野が欠ける、顔の片側が歪む、めまい、歩行障害」といった神経症状を伴う頭痛です。これらは、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害、あるいは脳腫瘍などが原因で、脳の機能に異常が生じているサインかもしれません。症状が一時的であっても(一過性脳虚血発作:TIA)、本格的な脳卒中の前触れである可能性があるため、軽視できません。「発熱とともに、激しい頭痛、嘔吐、首の硬直(項部硬直:首が硬くて前に曲げられない状態)、意識障害」が見られる場合は、髄膜炎や脳炎といった中枢神経系の感染症の可能性があります。これも緊急の治療が必要です。「徐々に悪化していく頭痛、特に朝方に強い頭痛や、嘔吐を伴う頭痛」も、脳腫瘍のサインであることがあります。けいれん発作や、性格の変化、記憶力の低下といった症状が伴う場合は、より注意が必要です。「50歳以降に初めて出現した頭痛」や、「がんや免疫不全の既往がある人の頭痛」も、慎重な評価が必要です。これらの「危険な頭痛のサイン(レッドフラッグサイン)」は、あくまで代表的なものであり、全てが当てはまらなくても、普段とは明らかに違う、何かおかしいと感じる頭痛であれば、自己判断せずに、速やかに神経内科や脳神経外科、あるいは救急医療機関を受診し、専門医の診察と適切な検査を受けるようにしてください。