突発性発疹は、高熱が下がった後に発疹が現れるという特徴的な経過をたどりますが、この解熱後の発疹期に、子どもが非常に不機嫌になることがよくあります。そのため、昔から「不機嫌病」や、あるいは「知恵熱」という俗称で呼ばれることもありました。「知恵熱」という言葉は、元々は生後半年から1歳頃の赤ちゃんが、知恵がつき始める頃に出す原因不明の熱を指す言葉でしたが、突発性発疹の好発年齢と重なることや、解熱後に発疹とともに不機嫌になる様子から、突発性発疹を指して使われるようになったと考えられています。では、なぜ突発性発疹の解熱後に不機嫌になるのでしょうか。その明確な理由はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの可能性が考えられています。一つは、高熱による体力の消耗や、ウイルス感染による体の不快感が、熱が下がった後も残っているためという説です。数日間の高熱で体力を使い果たし、まだ本調子ではないために、ぐずったり、甘えたりするのかもしれません。また、発疹が出ていることによる皮膚の違和感や、軽いかゆみなどが、不快感に繋がっている可能性も否定できません。さらに、ウイルス感染が脳の機能に一時的に影響を与え、感情のコントロールが難しくなっているのではないかという説もあります。実際、突発性発疹の原因となるヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)は、脳炎や脳症といった中枢神経系の合併症を引き起こすことも稀にあるため、何らかの神経系への影響が不機嫌に関与している可能性も考えられます。この解熱後の不機嫌は、通常、数日から一週間程度で自然に治まっていくことが多いです。保護者の方にとっては、熱も下がって一安心したところに、子どもの激しい不機嫌が続くと、戸惑ったり、心配になったりするかもしれませんが、これは突発性発疹の経過の一つとして比較的よく見られることだと理解し、焦らず、子どもの気持ちに寄り添って、できるだけ穏やかに接してあげることが大切です。十分な休息と愛情のこもったケアで、子どもは徐々に元の機嫌を取り戻していくでしょう。