お子さんが鼠径ヘルニアと診断された時、親御さんは不安でいっぱいになることでしょう。小児の鼠径ヘルニアは、特に男の子に多く見られる疾患で、出生時には閉じているはずの腹膜鞘状突起というお腹の管が閉じきらなかったために、腸などがお腹の外に飛び出してしまう状態を指します。生後数ヶ月から数年で発見されることが多く、赤ちゃんが泣いたり、いきんだりする時に、足の付け根や陰嚢が膨らむことで気づかれることがほとんどです。この膨らみは、お腹の力を抜くと自然に引っ込んだり、軽く押すと戻ったりすることが多いため、最初は心配ないと思われがちです。しかし、大人と同様に、嵌頓のリスクがあるため、放置することはできません。嵌頓とは、飛び出した腸が締め付けられて戻らなくなり、血流障害を起こす危険な状態です。お子さんが突然激しく泣き出したり、嘔吐したり、膨らみが硬くなって戻らなくなったりした場合は、緊急事態と考え、すぐに医療機関を受診してください。小児の鼠径ヘルニアは自然治癒することはなく、治療には手術が必要です。手術は、通常、全身麻酔下で行われ、飛び出した腸を元の位置に戻し、開いた管を閉じるという比較的短時間で終わるものです。手術の時期については、医師がお子さんの状態を考慮して決定します。乳幼児期に発見された場合は、嵌頓のリスクを考慮し、比較的早期に手術が推奨されることが多いです。親御さんは、お子さんの日々の様子をよく観察し、少しでも気になる症状があれば、小児外科を受診することをお勧めします。早期の診断と適切な治療が、お子さんの健やかな成長のために重要となります。