マイコプラズマ肺炎の治療には、主にマクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)、テトラサイクリン系(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)、ニューキノロン系(レボフロキサシン、モキシフロキサシンなど)といった抗生物質(抗菌薬)が用いられます。これらの薬剤は、マイコプラズマの増殖を抑える効果があり、適切に使用されれば、通常は数日以内に解熱し、症状の改善が見られます。しかし、近年、これらの抗生物質が効きにくい「薬剤耐性マイコプラズマ」が増加していることが問題となっています。特に、マクロライド系の抗生物質に対する耐性菌の割合が上昇しており、小児を中心に治療が難渋するケースが報告されています。もし、マイコプラズマ肺炎と診断され、適切な抗生物質による治療を開始したにもかかわらず、数日間(例えば3~5日程度)経っても発熱が続く、あるいは咳などの症状が悪化するといった場合は、薬剤耐性菌による感染の可能性を考える必要があります。この場合、医師は、最初に処方した抗生物質の種類を変更することを検討します。例えば、マクロライド系の薬剤が効かなかった場合に、テトラサイクリン系やニューキノロン系の薬剤に変更するといった対応がとられます。ただし、テトラサイクリン系の薬剤は、8歳未満の小児では歯の黄染などの副作用のリスクがあるため、原則として使用されません。ニューキノロン系の薬剤も、小児では関節への影響などが懸念されるため、使用は慎重に判断されます。薬剤耐性菌が疑われる場合、あるいは重症例では、入院して点滴による抗生物質治療が行われたり、ステロイド薬が併用されたりすることもあります。また、薬剤耐性の問題を助長しないためにも、処方された抗生物質は、症状が改善しても自己判断で中断せず、必ず医師の指示通りに最後まで飲み切ることが重要です。そして、不必要な抗生物質の使用を避けることも、薬剤耐性菌の増加を防ぐためには大切なことです。
抗生物質が効かない?マイコプラズマ肺炎と薬剤耐性