ゼーゼー、ヒューヒューという苦しい呼吸、激しい咳、息が吸えないような息苦しさ…。喘息発作は、突然起こり、本人にとっても周囲の人にとっても非常につらいものです。発作が起きた時に、パニックにならずに冷静に応急対処を行うことが、症状の悪化を防ぎ、早期の回復に繋がります。まず、最も重要なのは、気道を広げるための発作治療薬(短時間作用性β2刺激薬:SABA)の吸入です。医師から処方されている吸入薬(例えば、メプチンエアーやサルタノールインヘラーなど)があれば、直ちに指示された回数(通常は1~2吸入)を吸入します。この時、焦らず、ゆっくりと深く息を吸い込み、数秒間息を止めてからゆっくりと吐き出すようにすると、薬剤が気管支の奥まで届きやすくなります。吸入補助具(スペーサー)を使用している場合は、それを使って確実に吸入しましょう。次に、楽な姿勢をとらせることです。座った状態で、少し前かがみになり、肘をテーブルや膝につくと、呼吸が楽になることがあります。横になると、かえって呼吸が苦しくなることがあるため、避けた方が良いでしょう。衣服を緩め、ベルトやネクタイなどを外して、呼吸しやすいようにします。そして、ゆっくりと深呼吸をするように促します。口をすぼめて、ゆっくりと息を吐き出す「口すぼめ呼吸」は、気道が狭くなるのを防ぎ、呼吸を楽にする効果があります。また、水分補給も大切です。温かい飲み物(白湯や薄いお茶など)を少量ずつ飲むと、痰が出やすくなったり、気管支がリラックスしたりすることがあります。ただし、発作がひどくて飲むのがつらい場合は無理強いしません。周囲の人は、落ち着いて声をかけ、安心させることが重要です。不安や興奮は、発作を悪化させる可能性があります。これらの応急対処を行っても、症状が改善しない、あるいは悪化していく場合、唇や爪の色が紫色になる(チアノーゼ)、意識が朦朧とする、会話が困難といった危険なサインが見られる場合は、ためらわずに救急車を呼ぶか、直ちに医療機関を受診してください。