高齢者の鼠径ヘルニアと治療の選択
高齢になると、体のあちこちに不調を感じることが増えてきますが、鼠径ヘルニアもその一つです。加齢とともに腹壁の筋肉や組織は弱くなり、鼠径ヘルニアを発症しやすくなります。特に、長年の排便時のいきみや、慢性的な咳、重いものを持つなどの腹圧がかかる生活を送ってきた方は、そのリスクが高まります。高齢者の鼠径ヘルニアの特徴としては、症状が進行していても自覚症状が少なかったり、他の病気と併発していたりするケースも少なくありません。そのため、気づかないうちにヘルニアが大きくなってしまったり、嵌頓(かんとん)という緊急性の高い状態に陥ってから発見されることもあります。高齢者のヘルニア治療を考える上で重要なのは、患者さん自身の全身状態や、他に持病があるかどうかです。手術は鼠径ヘルニアに対する最も確実な治療法ですが、高齢で体力に不安がある場合や、心臓病などの持病がある場合は、手術のリスクとメリットを慎重に検討する必要があります。最近では、体への負担が少ない腹腔鏡下手術や、日帰り手術も選択肢として増えてきていますが、これも患者さんの状態によって適応が異なります。医師は、患者さんの年齢、健康状態、ヘルニアの大きさや種類、症状の程度などを総合的に判断し、最適な治療法を提案します。もし、手術以外の選択肢として、脱腸帯(ヘルニアバンド)を使用することもありますが、これはあくまで一時的なもので、根本的な治療にはなりません。高齢者の方で鼠径部に違和感や膨らみを感じたら、自己判断せずに、まずは外科を受診し、専門医に相談することが大切です。