男性更年期障害(LOH症候群)の症状である、気分の落ち込み、意欲低下、不眠、集中力低下、疲労感といったものは、実は「うつ病」の症状と非常によく似ています。そのため、両者を混同してしまったり、どちらの病気なのか判断に迷ったりすることが少なくありません。しかし、原因や治療法が異なるため、正確な鑑別診断が重要になります。男性更年期障害は、主に加齢などによる男性ホルモン(テストステロン)の低下が原因で起こる、身体的・精神的・性機能に関する様々な不調です。一方、うつ病は、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスの乱れなどが原因で起こる精神疾患で、持続的な気分の落ち込みや興味・喜びの喪失が中心的な症状となります。見分けるためのポイントとしては、まず、症状の現れ方です。男性更年期障害の場合、身体症状(例えば、筋力低下、ほてり、発汗、関節痛など)や性機能の低下(性欲減退、勃起不全など)が、精神症状とほぼ同時期に、あるいは先行して現れることが多いと言われています。一方、うつ病の場合は、精神症状が主体であり、身体症状は二次的に現れることが多い傾向があります。また、テストステロン値も重要な手がかりです。血液検査でテストステロン値の低下が確認されれば、男性更年期障害の可能性が高まります。うつ病の場合は、通常、テストステロン値に異常は見られません。ただし、注意が必要なのは、男性更年期障害とうつ病が併発しているケースも少なくないということです。テストステロンの低下が引き金となってうつ状態になったり、あるいは元々うつ病の傾向があった人が、更年期に入って症状が悪化したりすることもあります。治療法も異なります。男性更年期障害でテストステロンの低下が確認されれば、男性ホルモン補充療法が有効な場合があります。うつ病の場合は、抗うつ薬による薬物療法や精神療法が中心となります。自己判断は非常に難しいため、もしこれらの症状に悩んでいる場合は、泌尿器科や内分泌内科、あるいは精神科や心療内科といった専門医を受診し、詳しい問診や検査を受け、正確な診断を得ることが大切です。