夏場を中心に、子どもたちの間で流行しやすい感染症に「手足口病」と「ヘルパンギーナ」があります。どちらもエンテロウイルス属のウイルス(コクサッキーウイルスやエンテロウイルス71型など)によって引き起こされ、発熱とともに、口の中に痛みを伴う水疱や口内炎ができるのが特徴です。これらの病気は、いわゆる「夏風邪」の代表的なものと言えるでしょう。まず、手足口病は、その名の通り、手のひら、足の裏、そして口の中に、米粒大から小豆大くらいの水疱性の発疹ができるのが特徴です。口の中の発疹は、舌や頬の粘膜、歯茎、唇の内側などにでき、破れると潰瘍(口内炎)になって痛みを伴うため、食事や水分摂取が困難になることがあります。発熱は、必ずしも見られるわけではありませんが、出る場合は三十七度台の微熱から、時には三十八度以上の熱が出ることもあります。手足の発疹は、かゆみや痛みを伴うこともあれば、伴わないこともあります。お尻や膝、肘など、手足口以外の部位にも発疹が広がることがあります。次に、ヘルパンギーナは、突然の高熱(三十八度から四十度程度のことが多い)と、喉の奥(主に口蓋垂の周辺や扁桃腺のあたり)にできる小さな赤い水疱や、それが破れた後の浅い潰瘍(口内炎)が特徴的な症状です。この喉の水疱や潰瘍は非常に痛みが強く、食事や水分摂取が困難になるだけでなく、よだれが多くなったり、不機嫌になったりすることがあります。手足への発疹は通常見られません。これらのウイルス感染症には、特効薬(抗ウイルス薬)はなく、治療は基本的に、症状を和らげるための対症療法(解熱鎮痛剤やうがい薬など)と、安静、水分補給が中心となります。特に、口の中の痛みが強い場合は、脱水症状に注意が必要です。喉越しの良い、刺激の少ない食事を心がけ、こまめに水分を与えるようにしましょう。もし、高熱とともに口の中に水疱や口内炎が見られ、手足にも発疹がある、あるいは喉の痛みが非常に強いといった場合は、手足口病やヘルパンギーナの可能性を考え、速やかに小児科を受診し、適切な診断とアドバイスを受けるようにしてください。