むちうちの治療は、単に痛みを和らげるだけが目的ではありません。残念ながら症状が完治せず、後遺症が残ってしまう可能性も考慮に入れる必要があります。将来的に後遺障害の認定を申請する可能性を視野に入れるなら、最初の病院選び、特に整形外科での継続的な受診が極めて重要になります。後遺障害の等級認定を受けるためには、「症状固定」の診断を受けた後、これまでの治療経過や現在の症状を詳細に記載した「後遺障害診断書」を医師に作成してもらう必要があります。この診断書は、認定機関が客観的な判断を下すための最も重要な資料となります。そして、その診断書の説得力は、一貫した治療記録に基づいているかどうかに大きく左右されます。事故直後から定期的に同じ整形外科に通院し、レントゲンやMRIといった客観的な検査データ、症状の推移、行われた治療内容などがカルテに継続して記録されていることが、症状の存在を証明する強力な根拠となります。もし、通院が途切れ途切れであったり、整骨院の施術記録しかなかったりすると、症状と事故との因果関係や、症状の一貫性を証明することが難しくなり、適切な等級認定が受けられないリスクが高まります。つまり、整形外科での治療は、現在の痛みを治すという目的と同時に、万が一の事態に備えて客観的な証拠を積み重ねるという側面も持っているのです。むちうちになったら、まず整形外科へ行く。そして、症状が改善するまで、あるいは症状固定の診断を受けるまで、辛抱強く通院を続けること。それが、ご自身の体を守り、正当な補償を受けるための賢明な選択と言えるでしょう。