ものもらいの治療を受け、まぶたの腫れや痛みはだいぶ治まってきたけれど、なぜかまだ痒みが残っている、あるいは治りかけに痒みが出てきた、という経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。炎症のピークは過ぎたはずなのに、どうして痒みが続くのでしょうか。ものもらいが治りかけの時期に痒みが生じるのには、いくつかの理由が考えられます。まず一つ目は、炎症が完全に鎮静化していないためです。麦粒腫や霰粒腫の炎症は、見た目には改善してきても、組織レベルではまだ軽微な炎症が残っていることがあります。この残った炎症が、痒みを引き起こすヒスタミンなどの化学伝達物質を放出し続けている可能性があります。特に、霰粒腫の場合は慢性的な炎症が主体であるため、しこりが小さくなってきても、くすぶるような炎症が残り、痒みとして感じられることがあります。二つ目は、皮膚の修復過程で痒みが生じる場合です。炎症によってダメージを受けた皮膚組織が修復される際には、新しい細胞が作られたり、血管が新生されたりします。この過程で、痒みを引き起こす神経線維が刺激されたり、様々な化学物質が放出されたりすることがあり、それが痒みの原因となることがあります。「傷が治りかけると痒くなる」のと同じようなメカニズムです。三つ目は、乾燥や薬剤の影響です。治療のために使用した点眼薬や眼軟膏の成分によっては、目の周りの皮膚が乾燥しやすくなったり、わずかな刺激を感じやすくなったりすることがあります。皮膚が乾燥すると、バリア機能が低下し、外部からの刺激に敏感になって痒みを感じやすくなることがあります。また、薬剤の副作用として、まれに痒みが生じることも考えられます。もし、治りかけの痒みが気になる場合は、自己判断で治療を中断したり、市販の痒み止めを使ったりせずに、まずは処方を受けた眼科医に相談することが大切です。医師は、現在の状態を診察し、痒みの原因を判断した上で、必要であれば追加の治療(例えば、炎症を抑える点眼薬の継続や変更、保湿剤の処方など)を提案してくれます。また、痒くても目をこすらないように注意することも引き続き重要です。治りかけのデリケートな時期こそ、適切なケアを心がけ、完全に治癒するまで医師の指示に従うようにしましょう。