メニエール病が疑われる場合、耳鼻咽喉科ではどのような検査が行われるのでしょうか。診断を確定し、適切な治療法を選択するためには、いくつかの専門的な検査が必要です。その主な流れと内容を理解しておきましょう。まず、診察室に入ると、医師による詳しい問診があります。いつから、どのような種類のめまい(グルグル回るか、フワフワするかなど)が、どのくらいの時間、どのくらいの頻度で起こるのか。めまい以外の症状、特に難聴、耳鳴り、耳の詰まった感じ(耳閉感)があるか、そしてそれらの症状はめまいと連動して変動するかどうかなどを詳しく聞かれます。既往歴や家族歴、生活習慣(ストレス、睡眠、食事など)についても質問されます。次に、身体診察です。医師は、まず耳の中の状態を視診します。そして、眼振(がんしん:眼球の異常な動き)の有無や方向を観察します。眼振は、めまいの原因を探る上で非常に重要な所見です。フレンツェル眼鏡という特殊な眼鏡をかけて眼振を観察したり、赤外線CCDカメラを用いて眼振を記録したりすることもあります。また、体のバランスを調べるために、ロンベルグテスト(目を閉じて直立する検査)や足踏み検査などを行うこともあります。そして、メニエール病の診断に不可欠なのが「聴力検査」です。防音室に入り、ヘッドホンをつけて、様々な高さの音がどの程度聞こえるかを調べる純音聴力検査や、言葉の聞き取り能力を調べる語音聴力検査などが行われます。メニエール病では、初期には低音域の感音難聴が見られることが多く、めまい発作に伴って聴力が変動するという特徴があります。必要に応じて、さらに専門的な検査が行われることもあります。例えば、「グリセロールテスト」や「フロセミドテスト」は、利尿薬を投与する前と後で聴力がどのように変化するかを見る検査で、内リンパ水腫の存在を間接的に評価するのに役立ちます。「電気生理学的検査(蝸電図検査:ECoGなど)」は、内耳の電気的な活動を調べることで、内リンパ水腫をより客観的に評価しようとするものです。また、他のめまいを引き起こす疾患(特に聴神経腫瘍など)との鑑別のために、頭部MRI検査が勧められることもあります。これらの検査結果と臨床症状を総合的に判断し、医師はメニエール病の診断を下します。