RSウイルス感染症が重症化し、入院治療が必要となる最も大きな理由の一つが「呼吸困難」です。特に乳幼児は、気道が細く、また呼吸筋も未熟なため、RSウイルスによって細気管支炎や肺炎を起こすと、容易に呼吸状態が悪化することがあります。保護者の方は、呼吸困難のサインを見逃さないように、注意深く子どもの様子を観察することが大切です。どのような症状が呼吸困難のサインとなるのでしょうか。まず、「呼吸数の増加(多呼吸)」です。安静にしている時の呼吸回数が、普段よりも明らかに速い場合は注意が必要です。年齢によって正常な呼吸回数は異なりますが、例えば、1分間に60回を超えるような場合は、呼吸が苦しい可能性があります。次に、「喘鳴(ぜんめい)」です。息を吐く時に、ゼーゼー、ヒューヒューといった笛のような音が聞こえるのは、気道が狭くなっているサインです。喘鳴がひどくなると、息を吸う時にも音が聞こえることがあります。そして、「陥没呼吸(かんぼつこきゅう)」も重要なサインです。これは、呼吸が苦しいため、普段は使わない呼吸補助筋を使って一生懸命呼吸しようとしている状態で、息を吸う時に、肋骨の間や、鎖骨の上、みぞおちのあたりがペコペコとへこむように見えます。また、「鼻翼呼吸(びよくこきゅう)」といって、息を吸うたびに小鼻がピクピクと広がるのも、呼吸が苦しいサインの一つです。さらに、呼吸困難が進行すると、体内に十分な酸素が取り込めなくなり、「チアノーゼ」が現れることがあります。唇や爪、顔色が悪く、青紫色っぽくなるのが特徴で、これは非常に危険な状態です。その他、呼吸が苦しいため、機嫌が悪くなったり、ぐったりして元気がなくなったり、ミルクや母乳の飲みが悪くなったりすることもあります。これらの呼吸困難のサインが一つでも見られたら、特に月齢の低い赤ちゃんや、早産児、基礎疾患のあるお子さんの場合は、速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。早期の対応が、重症化を防ぐためには不可欠です。