「ものもらいは人にうつる」という俗説を耳にしたことがあるかもしれませんが、これは必ずしも正確ではありません。ものもらいの種類によって、感染の可能性は異なりますが、はやり目(流行性角結膜炎など)のように、空気感染や飛沫感染で簡単に他の人に広がる病気とは基本的に異なります。まず、細菌感染によって起こる麦粒腫(ばくりゅうしゅ)の原因となるのは、主に黄色ブドウ球菌などの身の回りにいる常在菌です。これらの細菌は、健康な人の皮膚や鼻の中などにも存在しており、通常は問題を起こしません。しかし、疲労やストレスなどで体の抵抗力が弱まっていたり、目に不衛生な手で触れたりすると、これらの細菌がまぶたの腺に感染し、麦粒腫を発症します。麦粒腫の原因菌そのものは、接触によって他の人にうつる可能性はゼロではありませんが、健康な人が麦粒腫の患者さんから菌をもらったからといって、必ずしも麦粒腫を発症するわけではありません。つまり、麦粒腫は、個人の免疫力や衛生状態が発症に大きく関わるものであり、感染力が非常に強い病気とは言えません。一方、マイボーム腺の詰まりによって起こる霰粒腫(さんりゅうしゅ)は、細菌感染が主な原因ではないため、基本的に人にうつる心配はありません。ただし、ものもらいの種類に関わらず、患部を清潔に保ち、不必要に触らないことが重要です。特に麦粒腫で膿が出ている場合は、その膿に直接触れた手で自分の他の部位(特に反対側の目など)や、他の人に触れてしまうと、細菌が移行し、新たな感染を引き起こす可能性があります。そのため、以下の点に注意しましょう。①患部にはできるだけ触れない。もし触ってしまった場合は、すぐに石鹸と流水で手をよく洗う。②タオルやハンカチは、他の家族と共用せず、個人専用のものを使用し、こまめに洗濯する。③コンタクトレンズの使用は、治るまでは避ける。④アイメイクは控える。⑤医師から処方された点眼薬や眼軟膏は、他人と共用しない。これらの衛生管理は、ものもらいの悪化を防ぎ、また、万が一の細菌の拡散を防ぐためにも重要です。
ものもらいはうつらない?感染対策と注意点